津波を感知して自動で弁を閉止する機械式緊急遮断弁を開発水害時の迅速な避難を可能に「浸 感 弁」 |キーロンマガジン 協成

津波を感知して自動で弁を閉止する
機械式緊急遮断弁を開発
水害時の迅速な避難を可能に
「浸 感 弁」

製品・商品関連

本編では、メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024の展示品である「浸感弁」について開発の背景から今後の展望まで営業担当者と開発担当者に話を聞いてきました。

 

浸感弁は、津波を感知して自動で弁を閉止し、内部の危険物(燃料油等)の流出を防止する機械式の緊急遮断弁です。

東電設計株式会社(以下「東電設計」)との共同開発で現在、特許出願中です。

(商品チラシ:浸感弁チラシ)

 

――浸感弁はどのような背景で開発に至ったのでしょうか。

(ガス事業部 松井)

2011年の東日本大震災で、湾岸域の小規模屋外貯蔵タンクが津波によって転倒・滑動・漂流し、中の石油類が流出する被害があったり、豪雨による浸水や河川氾濫が原因で、小規模屋外貯蔵タンクが浮き上がり、付属配管が破損して石油類が流出するという被害がありました。それを受けて、消防庁では、小規模屋外貯蔵タンクの津波・水害による流出等防止に関する調査検討会を2020年度から2カ年にわたって開催し、流出防止工法の開発が推進されました。

 

日本に点在する中小の危険物貯蔵タンク(約6万基、2022年消防庁統計)の流出防止対策に2022年頃より取り組まれていた東電設計は、20226月に、「小型危険物貯蔵タンクの津波・水害による流出防止対策方法の開発について<CFRPを用いた面的拘束による危険物タンクの津波・水害対策>」を発表されました。

 

これは、タンクが倒壊しないようにするための工法だったのですが、東日本大震災ではタンクの損傷以上に配管の損傷が見られていたため、東電設計では、配管損傷時の危険物流出対策である緊急遮断弁を独立した開発として進めておりました。

そのような状況下、東電設計からガスのバルブ・ガバナメーカーである当社に緊急遮断弁の構造について相談の声がかかり、2021年から共同開発を実施することになりました。

(ガス事業部 松井)

 

――開発途中の困難について教えてください。

(製品企画・基盤技術部 石田)

当社既存製品である緊急遮断弁に用いられている圧力上昇遮断ユニット(ガス圧の上昇を検知するとバルブが遮断する機構)を改良して、ガス圧ではなく水害で生じる水圧を検知させることでバルブを遮断する機構を研究しました。

その中で特に困難を極めたのは、遮断する水圧の水位を特定することでした。改良した圧力上昇遮断ユニットに実際の水を使うなど試行錯誤の上、最適水位の遮断位置を設定しました。

 

(ガス事業部 松井)

東電設計からの設計案に対して、開発当初は技術的課題が多くあり、設計案通りの開発が上手く進まないことがありました。そこで、技術部との開発進捗の共有を密にし、まさに製販一体となって要求の設計案(理想)と製品化の限度(現実)の摺合わせに尽力しました。

 

――需要家への拡販方針はどのようなものですか。

(ガス事業部 松井)

燃料小売店・卸売業者や、オイルタンク設置会社・協会(プラント保有事業者、空港関連会社、漁業連盟等)や、官公庁(自衛隊等)等のエンドユーザーに商品のPRを進めていきます。

燃料店やプラント事業者へのコネクションがありますので、既存取引先の管材商社と連携して拡販していく予定です。

 

――現在の課題について教えてください。

(製品企画・基盤技術部 石田)

本開発の使用流体は、当社製品で初めて扱う流体であり、流体において浸感弁の使用感を把握することが必要となったため、モニター導入設置を考えています。

(製品企画・基盤技術部 石田)

 

――浸感弁の魅力は何ですか。

(ガス事業部 松井)

燃料油での使用が可能です。具体的には、軽油、灯油、A重油まで幅広い流体で使用できます。また、弁体はガス業界で40年程度の実績がありますので、安心して利用していただけます。

加えて、震災、水害等の有事の際にバルブを閉める作業を省略できるため、タンク管理者の避難を最優先にすることができます。

――発売予定時期について教えてください。

(ガス事業部 松井)

まずモニター設置を行い、モニター完了後に正規品をリリースする予定です。

現在、モニター頂ける企業様を募集中ですのでご興味がありましたら、是非とも当社までご連絡ください。

 

――今後の展望や意気込みを教えてください。

(ガス事業部 松井、製品企画・基盤技術部 石田)

2つあります。1つ目は、弁の材質や機構を検討して、他の流体でも使用できるように開発を進めます。具体的には、水や化学品なども使用できるような材質にすることで、ご活用いただける幅を広げたいと考えています。

2つ目は、浸感弁には他の付帯装置を取り付けることが可能なため、感震ユニット等を開発して、お客様の要望に合ったカスタイマイズを可能にすることを目指しています。

 

インタビューに快く応じて下さった松井さん、石田さん本当にありがとうございました。浸感弁にご興味を持って下さった方は、是非弊社まで一度お電話下さい。

 

連絡先:㈱協成 東京本社 ガス事業部 松井 TEL: 03(5642)2302